2020年2月7日金曜日

青山陽一さんについての投稿

シンガーソングライターの青山陽一という人は、おしゃれな音楽をやっているらしい。見田くんは静岡の田舎から上京して間もない何も知らぬぼくに、そう教えてくれた。青山陽一かあ。高校の時から名前は聞いたことあるけど、聴いたことないなあ。おしゃれかあ。どんなかなあ。聴いた方がいいかなあ。かっこいいんだろうなあ。おしゃれかあ。何歳くらいの人かなあ。おしゃれかあ。そう思いつつ10年経った。ぼくは、青山陽一を結局聴かなかった。おしゃれという情報に怯えていたのだと思う。聴きたいのに、CD屋さんに行っても青山陽一を忘れてるふりをしていたのだと思う。そんな知らず知らずのうちに上京してからずーっと青山陽一に怯え続けていたある日、ぼくにメールが来た。ヒックスヴィルの中森泰弘さんや徳武弘文さん(超絶過ぎる素晴らしいギターテクニック)のバンドなどをやられている星川薫さん六川正彦さん、ドラマーの小島徹也さん、そして青山陽一さんらがブルースバンドを組むらしくて、ハープ奏者探してるみたいで紹介してって言われたんだけど、紹介していい?堂島孝平さんからだった。ヒックスヴィルって真城さんしか会ったことないし、徳武さんのバンドの人なんてなんとなく恐そうだし、小島さんっていったい何歳?おしゃれなはずの青山陽一がブルースバンド?そのメンバーでバンド組むのも変だし、しかもブルースだし、第一なんでぼくなんだ?色々と理解できないことが多かった。そんな中に混じるのなんてこわかった。こわすぎた。知らない人とやるのが苦手なぼくは、わりと断りたかった。しかもみんな有名な人たちだし、ブルースとかあんまり知らないし、君ブルースなめてんの?って言われそうだし、たぶんノイローゼぎみになりそうだから断ろうと思った。でも、忙しくもないぼくがもし断ったらすごく印象が悪いとも思った。堂島さんにも悪い気がした。そして、こわいとかなんとかそんなのとは裏腹に、そうはいってもなんだかんだいってもやはり、そんな方々とやる機会をいただけるのはありがたかったので、挑戦したいというミュージシャン精神みたいな気持ちが沸々と湧いてもいた。控えめに、魂みせるよ、みたいな感情がぼくの中に生まれてきていた。よし、恐すぎるけどお願いしよう。怒られたらやめよう。そう思った。堂島さんに伝えると、中森さんから連絡くるからやりとりしてね、ということだった。しばらくしてまた堂島さんから連絡が来た。タケ中森さんに連絡返した?あれ?おかしいと思った。中森さんから連絡は来ていない。それを伝えると、中森さん連絡したらしいんだよね。ほんとに来てない?連絡は来ていないので来てないですと返事したが、中森さんの中で、連絡したのに返してこない失礼なやつという認識になっていることが想像できてすごく恐くなった。違います違います、連絡は来ていないんです、無視ではないです、そんなことできないです気が小さいしぼく、すみませんほんとに、何が駄目だったんですかねえ、ぼくはたぶん悪くはないと思います、いやいやでも謝らせてくださいほんとにごめんなさいすみません。と、心の中で言い訳多目に何度も中森さんに謝った。ぼくの心のなかの中森さんは簡単には許してくれず、とても手を焼いた。堂島さんがもう一度中森さんに連絡してくれて、ようやく中森さんから連絡を受け取ることができたぼくは、少し丁寧な文面のメールに恐怖を感じながらも、決まっているバンドメンバーとライブの予定日、リハーサル日程、曲目などを確認させていただき、おかしくない程度にしっかりと謝った。堂島さんも冗談か本気かわからないが、中森さん怒らせたらやばいよ謝ってね、みたいなことを言うのでぼくはかなりびびっており、リハーサルの日が決まると、行くのがほんとに嫌で恐くてどうしたらいいのかわからず、青山陽一に怯えはじめた頃くらいからmitatakeを可愛がってくれていたブルースミュージシャンの長洲辰三さんのところに赴き、指導を仰いだ。ただ、辰三さんもやさしくていい意味で適当な方なので、大丈夫大丈夫、自分らしくやれば大丈夫!みたいなことを言っていただいたあとは飲んで終わった。また、レコーディングで鹿島さんといっしょになったので、今度こういうバンドやるんですけど皆さんどんな感じですかね?と聞いてみたら、たぶんみんないい人だと思うけど、青山さんはちょっと音楽に関してマニアックだから気をつけた方がいいかもね。と言われた。ぼくの中の青山陽一はおしゃれ一辺倒で、バンドの中では比較的恐怖はなさそうだと思っていたのに、ここにきて音楽マニアなどという最新の恐怖情報が舞い込んできて、さらに足取りは重くなった。青山陽一に、どう気をつければいいかもわからないまま、ぼくはリハーサル当日を迎えた。極度緊張状態のまま、早く着いてしまったスタジオ周辺をぐるぐると歩き回り、心身ともに疲れ果て、もうぼろぼろになっていた。歩きすぎてもうすぐリハーサルの開始時間になろうとしていた。最初にどの方にお会いしたのかわからない。スタジオにはすでにみなさんが入っていて、あとからぼくが入っていったのかもしれない。恐怖しか想像していなかったぼくだったが、徳武さんバンドの、星川さん、六川さん、ドラム小島さん、そして会う前から怒らせてしまっていたはずのヒックスヴィル中森さんらみなさんは、とてもとてもやさしかった。佐野くんいつもどういうのやってるの?何歳?へー、若いねー。おれたちといくついくつ違うねー。みなさんとは、一番若い小島さんとでさえ、16歳離れていた。だからということもあるだろうし、みなさん元々の人柄なのだと思うのだが、ほんとにやさしくしていただいて、スタジオの雰囲気はなごやか過ぎるくらいなごやかだった。ぼくはものすごく安心した。安心しまくった。よかった。なんとか続けられそうだ。音を出す前からそう感じてしまった。当たり前だが、音なんて出したらもうこの人たちはもうもうそれはそれはもうすごくてもう、ハーモニカを吹くのが楽しくて仕方がなかった。断らなくてよかった。逆にこの至福を逃しそうになっていてあぶなかったと思った。思ったが、思ったのだが、青山陽一、いや、青山陽一さんだけは、なんとなくだが、ぼくに、冷たい気がした。リハーサルをしている中で、皆さんブルースにこだわりを持っていることは大変感じたのだが、特に青山陽一さんのこだわり、知識は並々ならぬものを感じた。鹿島さんからの情報があったから余計感じたのかもしれない。そしてなにより、青山陽一さん、いや、青山さんは、ギターが上手すぎた。上手にもほどがあった。おしゃれな音楽をする人だと思っていたのに、いなたいブルースについての知識が豊富で、しかも、ギターがとてつもなく上手いのだ。上手いという表現を、これほどのレベルの方に言うのは、とてもとても失礼なことというのが世の常識なのだとは思うが、ぼくの中で、『上手い』は、最上級の表現だということを理解していただきたい。細々とした言葉など要らない。青山さんは、ギターが、上手いのだ。だからこそ、ブルースもろくに知らない下手くそとは話すことなどない。なんとなくだが、そういわれているような気がした。ずっと避けてきた『青山陽一』。だがぼくは、ここにきて、『青山陽一』を、CDではなく、いきなり生で体感させられた。しかもそれは、ずっと想像してきたおしゃれ一辺倒な『青山陽一』ではなかった。いなたかった(泥臭いみたいな意味で、ブルースをやる人にとっての誉め言葉だと思う)。そしてそして、違うかもしれないが、勘違いかもしれないが、あの『青山陽一』は、ぼくに冷たい。せっかくみんなやさしいと思って安心していたのに、ぼくは、あの『青山陽一』に冷たくされてるかもしれない、という新たな悩みを抱えてしまった。『BLUES LAB』というバンド名が今はついているが、当時このバンドは『ブルース研究会』という名前だった。研究会では、基本的に曲を持ってきた人が歌い、その人が間奏のソロまわしの順番を決める。ブルースは、歌はもちろん、間奏のアドリブのソロまわしも重要な聴きどころのひとつだ。ライブ本番、皆さんは、若いぼくにやさしく、わりとソロをまわしてくださった。ぼくは、お世辞にもブルージィーなフレーズを吹けるハーピストではない。9年やってる今でも全然自信がないから、9年前のバンドをはじめた頃なんて、思い返しただけで恐ろしい。なのに、ソロをまわしてくださる。六川さんなんて、いいね!とかいってくれて、本当にやり易くしてくださった。で、ぼくに冷たいのかもしれない青山さんも例外でなく、わりとぼくにソロをまわしてくださった。だがぼくは、青山さんがソロをまわしてくださるのは、やさしさなどではなく、ブルージィーなフレーズを吹けないぼくへ試練を与えてきているような気がしていた。はじめてのライブはかなり緊張したが、ライブ中にまわってきた青山さんの曲のソロは、特に緊張した。青山さんからの試練。これを乗り越えたら青山さんはぼくと普通にしゃべってくれる!そう思って吹いていた。初めての研究会のライブが終わり、みんなで楽しかったねなど言い合ってなごやかに話しながら過ごす時間にも、なんだか青山さんとはお話しするタイミングがなく、その日は帰った。試練は乗り越えられなかったようだった。次の研究会のライブは、ぼくはツアーのため欠席した。欠席している間に、佐野くんもういらないな、みたいになったらどうしようと思っていたが、3回目は訪れた。3回目の、ぼくにとっては2回目のリハーサルも、引き続き青山さんとはしゃべらなかった。ここ佐野くんソロとって、とか、そのくらいだったと思う。気になって仕方がなかったし、青山さんのこのバンドでのいなたさとおしゃれという前情報のずれをどうしても解明したいし、どんな音楽をやっているのか知りたい。ぼくはこのままでは気持ちが悪いし、10年越しだし、やはり聴きたかったので、3回目の研究会のライブのとき、その当時発売したばかりの青山さんの『Blues For Tomato』というアルバムを買った。青山さんに買いたいと申し出ると、おぉ、いいんですか?サンプルがないから差し上げられなくて申し訳ないけど。と、以外に丁寧なお気遣いいただいている雰囲気の言葉が返ってきた。なんだか少し安心した。まあでもCDを買ってくれる人につっけんどんな態度をとる人などあまりいない。次のライブもまたどうせ冷たいのだろう。そうやってぼくは、油断しないようにした。油断せずに家に帰ってその日のうちに青山さんのCDを聴いてみた。聴いてみたら、なんと、それは、メロディー、歌詞、進行などなど、いままでに聴いたことのないものだった。研究会ではみせない歌唱、全然違うギターテクニック。いろんなジャンルの要素が混ざっていて、一言でこういう感じとは言い表せない。おしゃれというのも当てはまるのだが、とにかく、唯一無二の青山陽一サウンドが広がっており、とてもかっこよかった。青山さん、まじですか。あなたすごいですね。ぼくはスピーカーの前で、彼に届きもしないがそう呟いた。ぼくはその日から移動中はずーっとBlues For Tomatoを聴いた。もういつのまにか青山さんの音楽、というか、青山さんがなんか好きになっていた。次の研究会のリハーサルの帰り道、青山さんとたまたま駅までいっしょになってしまった。まずいなと少し思ったが、恐る恐るアルバムよかったですと伝えると、いやいやまああんなもんですよ、みたいな控えめな言葉が返ってきた。前なら、ブルース知らないやつにいちいち答えるのがめんどくさいだけなんだろうなあとか思ってしまったと思うが、なんとなく、このときは、もしかしたらこんな感じの控えめな人なのかなあと思えた。佐野くん細野さんといっしょにやったりしてるの?急に青山さんが聞いてきた。細野晴臣さんとはお会いしたことすらないので、やってみたいけどやったことないですよ。と返すと、ハーモニカケースに細野さんのシールが貼ってあったからと青山さんが聞いた理由を話してくれた。青山さんは、知らないうちにぼくのハーモニカケースを見てたりしてたんだなあと思った。あれ?冷たくしている人のハーモニカケースなんて普通見、ない。その瞬間、この人は、もしかして、ぼくに冷たくしてるとかではないのか?ぼくは、前情報やらなにやら自分の中で勝手に解釈して思い込み過ぎて、青山さんのことを勘違いしていたのかもしれないことに薄々気づき始めた。そのあとのライブでの青山さんからまわってきたソロには、青山さんからの試練みは感じられず、はい、佐野くんこのあと楽しんで!みたいな雰囲気を感じた。次の研究会のライブ前のリハーサルのとき、青山さんの持ってきた曲を練っているとき、じゃあここのソロたけちゃん吹いてよ、と青山さんが言ってきた。冷たくしてる人に対して、『名字+くん』から『名前の前半+ちゃん』への昇格は普通、ない。この頃からリハーサルの帰りは中森さんの車に青山さんと共に乗せてもらうというのが恒例になってきていてた。冷たくしている人といっしょの車になんて普通乗ら、ない。この、リハーサルの帰りに中森さん青山さんといっしょに帰る、というのも、ぼくの青山さん恐怖症の治療に一役買っていたと思う。ぼくは、こうなったらもう、唯一の未体験、青山さんのライブに行こうと思った。そこでなにかわかる、きっとわかる。青山さん、あなたはほんとはやさしいんですか?ねえ、どうなんですか?ねえ、青山さん!とはもちろん言えず、あのー、次のライブ予約したいんですけど、まだ席ありますかね?そう青山さんにメールさせていただいたら、じゃあせっかくなんで何曲かいっしょにやりませんか?と返ってきた。これにはびっくりした。青山さんが自分のライブにぼくを!冷たくしている人を、自分のライブでいっしょに演奏しようと誘ったりは普通し、ない。ぼくは、薄々気づいてはいた。気づいてはいたが、この時ようやく確信した。確信させてもらった。青山さんは、ぼくに、冷たくしてはい、ない。2、3年かかったが、ぼくはやっと自分の過ちに気づいた。長かった。長かったが、よかった。気づけてよかった。やっと乗り越えることができた。これが世にいう『神は乗り越えられる試練だけしか与えない』かあ、と思った。試練は、ブルースができないぼくへ青山さんが与えているのではなく、思い込み勘違いが甚だしいぼくへ神が与えていたのだった。そのときのライブは難解な青山さんの曲に苦戦しながらも楽しくやらせてもらい、終演後に写真まで撮った。それからというもの、青山さんは、ぼくに仕事をふってくれたり、BLUES LAB以外でいっしょにライブをしてくれたり、ご飯を食べたり、冷たいというかどちらかというとかなりやさしく、よくしてくれている。mitatakeで青山さんの曲をカバーさせてもらったりもしている。勘違いに気づき早7、8年、青山さんは見た目が若いので、ぼくと20歳近く離れてるのに、なんとなく6コ上くらいにしか感じられなくて、しかもやさしいから、ぼくは度々距離感を間違えてしまう。その都度、青山さんが載っている雑誌やらネット記事など見て、かなり歳上だし、日本音楽界に名前を刻んできたすごい人なんだということを再確認する。そんな日々が続いている。せっかく素敵なコメントをいただいているのに、こんな失礼な文を書いていることがもう距離感を間違えていると思うが、そんなことも青山さんは許してくれてしまうだろう。やさしい人である。青山さんにしてみたらとんでもないと思うだろうが、人と人との出会いはほんとに面白い。そんな青山さんからいわれた一番うれしかったことが、『たけちゃんがやってるmitatakeの見田くんってあのギター上手い人でしょ?』である。誰かとやっていたのを観たと言っていたと思う。おれはあんなふうに弾けないから、なんて付け加えてくれていたと思うが、青山陽一という名ギタリストから、自分の相方、友人をそんなふうにいってもらえたのがとてもうれしかった。青山さんは、mitatakeを生で聴いてないようでもう聴いてくれているも同然なのだ。コメントにも書いてくれていたが、もしほんとうに3月14日、青山さんが富士宮市民文化会館に現れてくれたら、あつい。あつすぎる。期待したい。青山さんコメント本当にありがとうございました。 

青山さんは、1985年に、バンド『GRANDFATHERS』でデビューし、その後青山陽一名義でソロ活動を続けている他、ギターでいろんな方のサポート、レコーディングをしていますし、その豊富な音楽の知識を活かして、さまざまなミュージシャンのCDレビューや、音楽雑誌の記事なども書いていたりと、とても幅広い活動をされています。『BLUES LAB』や、ぼくとシンガーソングライター鈴木晶久くんとの『青鈴岳』もやっています。 もうすぐ名古屋と大阪でバンドでのライブがあるそうです。お近くの方、そうでない方も是非!BLUES LABも是非!!


 2/22(土) 名古屋・鶴舞K.Dハポン

青山陽一 the BM’s 30th Anniversary Mini-Tour

出演:青山陽一(gt,vo) 伊藤隆博(k,cho) 千ヶ崎学(b,cho) 中原由貴(dr,cho)
開場:18:00 開演:19:00
予約:3500円 当日:4000円(各オーダー別途) ※12/20(金)よりK.Dハポン・ウェブサイトにて予約受付開始
問合せ:052-251-0324(KDハポン)


 2/23(日) 大阪・梅田ムジカジャポニカ

青山陽一 the BM’s 30th Anniversary Mini-Tour 

出演:青山陽一(gt,vo) 伊藤隆博(k,cho) 千ヶ崎学(b,cho) 中原由貴(dr,cho)
開場:18:00 開演:19:00
予約:3500円 当日:4000円(各オーダー別途) ※12/20(金)よりムジカジャポニカ・ウェブサイトにて予約受付開始
問合せ:06-6363-0848(ムジカジャポニカ)



 2/28(金) 荻窪ROOSTER

 BLUES NIGHT

 出演:Blues LAB 星川薫(vo.g) 中森泰弘(vo.g) 青山陽一(vo.g) 六川正彦(b) 小島徹也(ds) 佐野岳彦(hrm) 真城めぐみ(vo) 青山ハルヒロ(vo)
開場:19:00 開演:20:00
チャージ:2800円(オーダー別途)
問合せ:03-5347-7369(ルースター)


 http://www.yoichiaoyama.com/


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